24時間走と『岩本くん』

通りかかった方から何度も聞かれる。
『マラソン大会やってるの?』
私『24時間走り続けるマラソンなんですよ』
『…?…?』

みんながそんな大会があるんだと不思議そうな顔をする。
いぶかしげな視線を送る。
マイナー競技であるから少しずつ広めていく必要があるのだが、わずか一時この競技を見ていても、何が何だか分からないだろう。
面白さをどう伝えればいいものか…。
ラソンが人生だとしたらこの一周回はわずか半年なんだから、これだけじゃぁ人生の何も分かるわけがない。

でも一歩ずつ一歩ずつ進んで行くしかない。出来るコトからやっていくしかないのだ。
その為には…何としてでも世界選手権の代表選手に選ばれなくては話しにならない。

岩本くんは誰よりもそれを感じていたはずだ。
もちろんプロアスリートとしての意地やスポンサー契約のことや☆のリーダーとしての立場など色々なものを背負って走ったはずだが、彼を動かしている根底にあるものは『24時間走をメジャー競技』にすることなのだ。

そして、彼は244km走った。この数字は代表選手の内定をあらわす。

レース中の彼に声を掛けるのを躊躇ったことがある。
彼が余りにも集中していたので声を掛けることでそれを切らせたくなかった。
いい顔して走っていた。
数字だけでなく勝負も手にした。
順位はどうでもよかったのだろうがやはりアスリートとしては勝ちたいのが本音だろうし喜びは少しでもデッカイ方がいいに決まっている。

私がこのウルトラの世界に入ったきっかけでもある彼。この4年の月日は私にも色んなものを与えてくれた。
彼のこの4年もまた山あり谷ありだったろうが、今またさらに高い山を登る。