女将のお誕生日を燕山荘で!
「ひとりで誕生日に燕山荘へ行くことにした」…ってメールが届く。相手は山の相棒・女将。
何?何?なぜ「ひとり」???
ってことで「私もいっしょに行っってお誕生日いっしょに過ごそうか?ひとりじゃぁ寂しくなぁい?」と返事し、『女将ちゃんお誕生日お祝い会』決定!
どうせならたくさんのみんなでと思ったので、お友達に声を掛けてみたら、うめちゃんも参加してくれることになった。
うめちゃんとはサプライズのバースデイプレゼント〓、山グッズを相談。
雁坂の準備の間に、燕行きの準備を進める。
直前に台風がやってきて、女将から「台風の後で道が荒れてると大変だから中止にしようか」って、メールがきた。
女将のための山行で、しかもお誕生日に何かあったら大変だから、私も同意。
でも一晩考えたら、どうしても山に行きたい!燕山荘にも泊まりたい!(燕山荘は泊まりたい山小屋の上位に入ってるので、せっかく予約したのをキャンセルはもったいない)
朝一に「女将、燕山荘のキャンセル待って〜。私ひとりで行くわ」と。
女将から「えーーーっ、恵美さんひとりで行くなら私も行く!」と。何だか立場逆転。
で、行く、行かないと話し合って、すったもんだしたけれど、無事に23日の夜に3人で集合し、うめちゃん号でいざ出発となった。
現地近くの道の駅には3時間半くらいで到着。
うめちゃん号は大きいのでシートを倒して仮眠。
でも寒くてあまり眠れない。
しかもお天気予報は晴れなのに、雲が厚くてお日様はどこにも見れない。
お天気大丈夫?
とりあえず6時過ぎに中房温泉の登山口へ向かう。
登山口へ向かうと、3キロ先くらいからたくさんの路上駐車〓〓がいっぱい。
もしかしてもしかしたら、登山口の駐車場〓って満車?
Uターンする場所もあまりないし、少しでも登山口近くに路駐したいので先へ先へと。
でも、やっぱりどこにも停めるスペースはなく、3キロ近く戻って車を停め、支度をして歩き始める。
中房温泉の登山口にもたくさんの人が。
こりゃかなり渋滞だなぁ。
うめちゃんは餓鬼岳まで行く予定なので先行してもらう。
私と女将はゆっくりペースで登り、写真撮ったり、おしゃべりしたり。
それにしてもいい天気!
すっきりの青い空。
こんなにいい山日和はないだろう。
あの厚い雲はいつしか下になり、雲海を眺めながら登る。
途中で槍ヶ岳が見えた!
思わず二人で「槍だぁ〜」と叫ぶ、もちろん鼻歌はアルプス一万尺〜♪
富士山も遠くに見えた。
合戦尾根はアルプスの三大急登というだけあって、ずっと登り続くけれど、嬉しい気持ちの方が大きいので、息は少し切れても、登るのが楽しくて楽しくて仕方ない。
女将は後ろで「ハッピー、ハッピー♪」「うわぁ〜、うわぁぁぁ〜。ふふふふふ〜」と声を上げ続けてる。
もちろん、私も。
独り言連発。
そしてようやく燕山荘に到着。
燕山荘はやっぱりただの山小屋ではないのが一見して分かる。
滞在していて泊まってみたい山小屋、泊まって良かった山小屋に選ばれるだけある…って何度も思った。
早速、自分たちの寝る大部屋に案内してもらう。
私達は新館だったので、奥の上の奥の奥の奥。これ以上奥には部屋がないところ。
最大収容600人らしいけど、この日も500人以上が泊まっていたはず。
私達の寝るスペースは、小部屋を6人〜8人用に仕切ってあり、小さなお布団に二枚に3人くらい。
すっぽり入れるシュラフを使う。男女関係なく到着順に部屋が割り振られているのかな?
私はうめちゃんと女将の真ん中にしてもらった。
小部屋の中にある小さな窓からは明日行く大天井や槍ヶ岳も見えた。
(翌朝はキツネの子供が遊びにやってきた)
重いザックを置いて、さぁ燕岳へ!
燕岳は花崗岩と砂礫とで出来ているので、北アルプスの中でも一際美しい、女性的な山。
2763mとそんなに標高はないので初級者にはもってこいの山。
また、ここが北アルプスの人気の表銀座コースの起点ともなっているので、狭い山頂はたくさんの人で溢れ、写真を撮るのも順番待ち。
なんだか落ち着かなくて、さっさと写真を撮り、もう少し先の北燕岳を目指す。
あんなにたくさんいた人も北燕まではちょこっと厳しいせいか、行く人がぐっと減る。
またまた二人でるんるんランラン。
面白いポーズを撮り合いながら北アルプスを心行くまで楽しむ。
夕食は17時から。
食堂は100人くらいかな?
私が知ってるだけで4回転はしていた。
山小屋の食事とは思えないほど美味しい。今日はハンバーグだった。
食事の終わり頃には山荘のオーナーがやってきて、この山荘を建てた当時の話、山を登る心得、そしてアルペンホルンを演奏してくれた。
食事が終わってからは、サロンに移動し、いよいよ「女将のお誕生日会。」。
女将はビール、私とうめちゃんはワインで乾杯。
自分のお誕生日を大好きな山で迎えらる女将。
うらやましい!
私とうめちゃんは12月だから…ダメかなぁ。
この一年は病気になったり、捻挫があったり、友達を亡くしたり、いろんなことがあった女将。
でも、こうやって元気に山に登れた!
この一年頑張ったご褒美として、山の神様もいっぱい祝福してくれたことでしょう。
私も女将と付き合うようになって4年近い。
こうやってお祝いさせてもらえる良い関係でいられることに感謝。
お互いにマイペースで、おっちょこちょい。
いっしょにいてもあまり気を使わず、自然に合わせられる。
いくつもの山にいっしょに登り、いつかいっしょに北アルプスへ行きたいねっ!と話していたのが、この一年で一番ハッピーな日に実現できた。
私たちは幸せなんだろうね。
きっと女将パワーのおかげかな。
飲み終わって、外に出たら…こんなに綺麗な星空は初めて見たってくらいの、満天の夜空が広がっていた。
言葉が出ない。
星空に包まれながら、星を見上げる。
これからの3人の人生、いろんなことがあるだろう。
でも、どんな時もこの星のように一生懸命輝いていられますように。
就寝時間は21時だったが、20時過ぎには、おやすみなさ〜い。
幸い同じ部屋にはイビキがうるさい人もいなかったので爆睡。
ただし、私は翌朝女将から「恵美さん、鼻唄歌ってたよ〜〓何の歌だったかなぁ?そして『カリサカ…むにゃむにゃ』って寝言を言ってたわ」と聞かされる。
みんなの安眠妨害は私だったかも。
山の朝は早い。
4時半過ぎには自然に目が覚めた。周りの人も少しずつごそごそ。
食事の時間は5時から。
でもご来光は5時30分過ぎらしい。だんだん夜が明けて来るのを見たいから、朝ご飯を後回しにして、身支度を整え、燕山荘の裏にあるご来光ポイントへ。
外に出て第一声。
「きれーーーーーっ!!!」
分刻みにどんどん雲海が明るくなってくる。
そして、とうとう「おおおーーーーっ!きたきたよ!!!」
まぶしい。
朝の力。
先月見た立山でのご来光では「強さ」を感じたけれど、ここでのご来光は「大きさ」を感じた。
広い広〜い雲海から上がってくるからだろうね。
私たち3人、燕山荘、そして北アルプスの山々が、朝焼けに包まれていく。
優しく穏やかな気持ち。
よ〜し、今日も一日楽しも!頑張ろ!
美味しい朝ご飯をたくさん食べて(うめちゃん3杯飯、女将と私は、2杯飯)、いざ出発。
今日は、あっちに行くんだよ〜と、小屋の窓から見える大天井方面を指差して教えてくれるうめちゃん。
たまたま、窓の下にコギツネこんこんがやって来た♪
かわぁいい〓
でも、あっという間に姿を隠してしまったけど。
最後にもう一度、燕岳の前で3人で写真を。
私と女将は大天井へ。
うめちゃんはさらに先の常念岳まで。
表銀座と言われるこのコースは、とても整備されていて歩きやすい。
しかも山、山、山をずっと眺めながら歩ける至福の時。
その中でやっぱり素晴らしいのは槍ヶ岳。
かっこよすぎる。
大天井へ行く途中で一人の年配の女性に会った。
何人かの仲間で来ているようだったけど、仲間の人からも一目置かれている存在のよう。
少し岩場があったので道を譲ってくださった。
「お若い方先にどうぞ」と。
お言葉に甘えて先行すると、先に登っていたおじさんが「〓〓さん元気だよなぁ〜。こんな岩場も登ってくるんだから。77才には見えないよ〜。スーパーばあちゃんだよ」と。
77才だって!
すごい。
ここまでのコースだって、ちょっときついなぁーと思うところが何ヵ所かあったのに。
そしてここまで来たってことは常念に抜けるはず。
「おばあちゃん」って呼べない。会えて嬉しかったなぁ。
私もまだまだガンバんなきゃ…と素直に思う。
大天井に着くと目の前には、ばばーばーんと槍ヶ岳。
女将に「来年のお誕生日はあっちに行きたいね〜」と。
そのためには、もっと山を覚えないといけないねっと。
二人の目標がまた一つ出来た。
そこから、大天井岳をピストンしても良かったんだけど、どうせなら違う道を行きたいってことになり、大天井ヒュッテにぐるっと回るルートを行くことにした。
このルートがちょっとやっかいだった。
大天井岳を巻いて行くようになってるのか、左切れてる切れてる〜。落ちたらサヨナラだよ。
ヒュッテのあたりに着いたら、かなり時間が押していたので、そのまさっきの分岐(大天井岳方面、槍ヶ岳方面)へ表銀座を歩く。
ここがまた切れてる切れてる〜。もう下は見ない。
私は正直こういうルートの方が最近ちょっとドキドキして楽しみなんだけど、高所恐怖症の女将はさぞかし怖かっただろう。
しかも、途中で雪?が。
初雪〜なんて言ってる余裕もなく、二人でこれ以上降ってくれるなよ〜とお祈り。
午後からはどんどんガスってきて、槍ヶ岳も隠れてきてしまったけど、たくさん見れたから、大満足。やっと燕山荘に帰還。
ランチのカレーを食べて(女将は豚汁とご飯)、とうとう下山の時間になってしまった。
はぁ〜寂しい、帰りたくない。
もう10才若ければ夏の間は山小屋でバイトしてただろうな。
あっ20才かなぁ。
うめちゃんとは、中房温泉で15時に約束していたけど、下山開始が13時30分…。
間に合わない。
とりあえず30分ほど遅れることをメールで送る。
でも、常念まで行ってるんだから下山道で抜かされるよね〜なんてのんきに思っていたら、うめちゃんは、私たちがカレー食べてる間に、一足早く下山開始をしていた。
おまけに携帯が圏外でメールが届いていなかったらしい。
私たちが中房温泉に着いた時には、心配そうな表情のうめちゃん。ごめん。
でもうめちゃんは気転を効かせて、あの行きに大渋滞で三キロも先の林道を走り、車を登山口まで乗り入れてくれていた。
うめちゃん〜神様に見えたわ。
下山中に女将ともしそうだったらどんなにいいことか〜なんて話していた通りの展開で、めちゃくちゃ感激。
もう今さらロードを歩きたくない。
最後まで、やらかしてしまった二人だったけど、うめちゃんに感謝、感謝。
おまけに松本まで送ってもらった。
うめちゃんは翌日からも山なのでここでお別れする。
ありがとー。
スーパーあずさに乗って、二人で改めて乾杯!
ホントに楽しい楽しい2日間だった。
一生懸命働いて、いつも元気、いつもハッピーな女将。
でも、女将も普通の女の子(いやいや、かなり変わってはいるけど)。
時には、弱い時もある。
頑張り過ぎて疲れちゃうこともある。
だから、私といる時だけは、のんびりしていていいからね。
私も同じ。
お互いに無理をしないで、ばぁちゃんまで付き合おう。
77才の時にも、どこかで笑い合っていよう。
おまけ。
帰りのスーパーあずさ。
私は八王子で、女将は新宿まで乗車。
先に降りて気付く。「女将〜、土産を網棚に忘れてきたぁぁぁ」
女将の荷物は、一週間山に籠るのかと思うくらい重たい。
私の忘れてお土産でさらに重たくなったはず
許せ、女将。