SPARTATHLON 2007 ゴールから今日まで

あの暑い、熱い日からもう一ヶ月とちょっとが過ぎました。
私はまたいつもの場所でいつも通りの毎日を過ごしています。
スパルタスロンという大きな目標を達成することが出来て、
さぁ次の目標は?どんな形でどんな風に踏み出せば?途方にくれながら過ごしています。
絵に描いたような『燃え尽き症候群』です。

日焼けした腕にくっきりと残っていた腕時計の白い帯が少しずつ薄れてきて、それが何故か寂しく感じられます。
もうすっかり季節は深い秋なのですね。


■ゴール後
ゴール側にあるテントにて簡単なメディカルチェックを受けタクシーでホテルに送ってもらいます。
部屋に入り明子さんと35時間ぶりの再会です。

女子優勝の明子さんとガッチリ握手しました。
自分の完走はもちろんですが明子さんの優勝は本当に嬉しかったです。

そのあとはすぐにシャワーを浴び部屋のバルコニーに出てゴールを目指すランナー達に声援を送りました。
“ブラボー、ブラボー”
ビクトリーロードを進んで行くランナー達は本当に輝いていました。
一人ずつから伝わってくる“誇り”がキラキラと光を放っています。とても美しい光景でした。

最終ランナーを見送り、ベッドに横になると、そのまま寝てしまっていました。
夜にスパルタの町で行われた表彰式を終えて帰って来た明子さんに“食事に行こうよ”と部屋に迎えに来てもらうまで深い眠りの中でした。


夕食を軽く取った後すぐに部屋に戻り死んだように眠りました。
時々体のあちこちが痛くて目が覚めます。
熱を帯びた体はいつまでも火照ったまま。
ベッドの上で1ミリ体を動かすことさえこの時の私にとっては大変な作業です。

遅い朝を迎え、重い足を引きずりながらレオニダス像まで歩きました。

ゴールした時はゆっくり眺める余裕もなかったので、改めてレオニダス像と対面です。
そっとレオニダス像の左足に手を添えました。

 
私はこの何年かの間、この像に会いたいが為に走り続けていたのです。
心の中で話しかけます。
“レオニダス王、やっとやっと貴方に会えました。貴方にたどり着けました。
貴方に会うのが私の夢でした。
この先どんなことがあるか分からないから、もしかしたら貴方に会うのはこれが最後になるかも知れません。
本当に会えて良かったです…。
私に大きな夢を、走るという素晴らしい夢を与えてくれた貴方に…ありがとう”


アテネにて表彰式
完走したら着ようと用意していたドレスで出席しました。
でも高いヒールのサンダルを履くことは出来ません。
足は象足ですし、唇がパンパンに腫れてメイクどころじゃありません。

最初に男女共に3位までの方の表彰があります。
 

そして完走した順番に名前を呼ばれ表彰してもらえます。
自分の番が近づくにつれて心臓が飛び出すんじゃないかと思うくらいドキドキしました。

こんなにドキドキしたのはいつ以来かしら…?
自分の名前が呼ばれ前へ出てから、何が何だか分からないままメダルをかけてもらい完走証を授与してもらいました。

終わって一息つくと、男性が私に駆け寄ってきました。
彼は私に“私はスパルタの町に入ってあなたからお水をもらった者です。ありがとう!お互い完走出来て良かったですね”と言葉を掛けてもらいました。
彼は私の顔を覚えていてくれたんですね。
これがスパルタスロンの素敵なところですよね。

一緒に走った人、闘った人、サポートの人、レースに関わった全ての人が深い絆で結ばれている気がします。

そして、みなさんお一人、お一人に送りたい。
“ブラボー”の言葉を。

 


■最後に…
スパルタスロンはウルトラランナーのみなさんには一度は是非チャレンジして欲しいレースです。
日本にも楽しいレースがたくさんありますが、スパルタには他では味わえないものがいっぱいなのです。

是非ゴールの先にあるものを自分の目で確かめてください。
時間とお金を掛けても値するものがそこにはあるはずです。


もちろん、私もスパルタスロンに魅了された一人です。
またいつかチャレンジしたいです。
唯一今回のスパルタで残念だったのが、25周年の記念大会だったのでゴール後にもらったのは記念プレートでした。
私は以前完走した方から見せてもらった重い重い(文鎮のような)メダルを貰えるとばかり思っていたのでそれだけが心残り。

なので5年後ではダメですね。
そして毎年9月末を迎えると私は遠いギリシャを、熱いあの日を、レオニダス像に続くビクトリーロードを思い出し心踊らせることでしょう。