分水嶺トレイル

7/14(土)〜7/16(月・祝)の三連休に「分水嶺トレイル」に行ってきました。

この大会は、奥多摩・鴨沢から長野・平沢峠しし岩までの84kmがコースとなっていますが、トレイルランニングよりも、山歩きがほとんどです。
基本は3人〜5人までのチーム戦となりますが、実行委員会から走力を認められた場合は、ソロでの出走OKです。

私はチーム凰の千夏ちゃん、なおちゃんの3人で参加しました。

千夏ちゃんもなおちゃんも私より速いし、練習も積んでるし、何より若い!
私が役に立てるのは、ちょっとみんなより山の経験が多いことだけなんです。

チームリーダーは私として登録しましたが、2人に迷惑を掛けてしまわないかと心配で心配で。
(この心配は、本当になってしまいました)

そして、そして、記録は…、なんと50時間04分!
50時間も山にいたんです。

ウルトラマラソンを走っている私ですが、この大会が一番長い時間掛けての大会となりました。


もちろん山地図の一般登山者のコースタイムよりは早いのですが、8kgくらいあるザックを背負って2,000m超えの山をいくつも登るのですから、なかなか走るというわけにはいきません。
早く歩くのが精一杯。


この8kgのザックの中身はというと、行動食(おにぎり2個、パン6個、パワージェルなどのエネルギー源を5個、ブドウ糖1袋、ナッツ1袋、ガム、飴、まんじゅう)、エアーマット、エマージェンシーシート、カッパ上下、上着、帽子、アームウォーマー、サングラス、手袋、ストック、クールネックウォーマー、熊鈴、地図、磁石、ハイドレーションとペットボトル合わせて2〜3リットル、薬、お金、携帯電話。


また、チームでロープ10メートルを必ず持たないといけないのですが、このロープはなおちゃんが持ってくれました。

3人で走っていると、やはり色んなことが起こります。
眠気、ハンガーノック、体調、気持ち、みんながレース中にそれぞれ経験したはずですが、やはり同じ時間帯になるわけはないのです。

私は、レース2週間前に転んだ時の影響で左膝が痛くて、ゆっくりしか下れません。2人を待たせてしまうことになります。

また燃費が悪いので、しょっちゅう補給をするので、ストップが多いのです。


そして、水が無くなり水場で補給したり、小屋でトイレに行ったり、眠気で牛歩になり途中で仮眠5分ほどしたり…と、3人3様でストップしないといけない時があります。

でも、チーム戦でいいところもいっぱいあります。
1人だったら、無理してしまったり、適当に後回しにしてしまったり…と、どんどん疲れがたまり、補給も遅れ、レースとして成り立っていないか、あとで大変なことになったかも知れません。


3人でいることの心強さ。


道が分からなくなったり、夜の恐怖に怯え、雨風に打たれ霞んで前が見えなかったり、崩れた道や、ロープを使う岩場、滑る丸太橋、倒木など、離れずに声を掛け合い進みます。

それでも「リタイヤ」を考えたことは3人とも一度もなかったのです。

3人での50時間の中には、一生の思い出となるような素晴らしい出来事がたくさん、たくさんありました。


七ツ石小屋の冷たい水。
雲取山頂で食べたお昼ご飯。
水干までの崩れた道や沢渡り。
丸太橋は滑って落ちそうになり、このあとの橋はほとんど沢を渡り、そのたびに靴がびちょびちょ。
迷ってしまった古礼への道。
雨と風の中を進み第一関門の雁坂峠は1時間前に到着。
破風山までのゴロゴロした岩場で滑りそうになる道を緊張しながら歩き、やっと着いた破風山避難小屋で2時間の仮眠。
分水嶺トレイルの多くの参加者もここで仮眠していた。
4:00過ぎに再スタート。
2日目の朝を迎え、朝日を受けたことで元気が出てくる。
甲武信小屋の前で朝ごはん。
山小屋のご主人に「長い道のりだから気をつけていくんだよ」と。
甲武信ヶ岳は私にとって、百名山12坐目になる♪
国師ヶ岳への道は長く長く山頂に着くまでに、試走をした千夏ちゃんに何回「あとどれくらい?」と聞いただろう。

第2関門の大弛峠もやはり関門1時間前に到着。
楽しみにしていた大弛小屋でのカレーとうどん。
カレーは大盛!
たくさん食べて、またまたパワーアップして、金峰山へ。
ここには応援に来てくれていたチーム仲間の良一さんがいてくれた。
山の中で知ってる人に会えることに、ほっとします。
金峰山までの稜線は美しくて、はしゃぎっぱなしの私。
これから行く瑞牆山も遠くに見える。
金峰山の山頂からまさかのロスト。
でもすぐに引き返すことができた。
そして富士見平小屋までも美しい奇岩が続き、歩いていても飽きない。
第3関門の富士見平小屋には夕方到着。
ここを翌朝07時までに出発すればいいので、ここで少し長い休憩を取る。
一度ゆっくり休まないと、これからの険しい道を進めそうにない。
富士見平小屋で、カップラーメンを。
これが晩御飯。
小屋の奥様に素敵なティーカップに入れてくれたハーブティーをご馳走になりました。
粋なおもてなしに思わず気持ちが緩む。
また3時間ほど仮眠。
ちゃんとツェルトを張って寝た。
そして、瑞牆山へ。
登り始めたのは21時くらい。
良一さんが心配そうに私たち3人を見送ってくれた。
その心配そうな理由が後から分かる。
道が分かりにくい。
真っ暗で岩場に付いている印がなかなか見つからないのだ。
そして、とうとう私はひっくり返ってしまった。
見上げてライトを照らし印を探している時にバランスを失う。
後ろ向きで岩場を滑り落ちてしまう。
ほんの一瞬のことなんだけど頭の中では、私はこれで終わりなのかな、一体どこまで落ちて行くのだろうと考えた。
落ちた岩場にザックが引っ掛かった。
止まった。
ベッドライトがぶっ飛んだが千夏ちゃんが拾いに行ってくれた。
なおちゃんが私の身体を起こしてくれ、傷付き血が出たところに絆創膏を貼ってくれた。
良かった。
特に大きな外傷もないようだから、進むことが出来る。
いつも転び慣れているので感覚が麻痺しているのかも。
瑞牆山にやっと登頂。
二人に「ライト消してごらん。めちゃくちゃ星がキレイだよ」と。
満天の星が瞬く。
そして下山。
簡単に見える山地図なのだけど、夜の暗闇の中ではやはり印が分かりにくい。
沢を何度も渡りやっと林道へ。
ここから10kmほど歩けば信州峠へ出るはず。
信州峠〜ゴールまでの道は2週間前に試走したばかり。
ゴールは近付いている。
そんな気持ちが集中力を消したのか、林道でまたロスト。
1時間以上違う道を歩いてしまう。
行き止まりになりやっと気付く。
情けない。
何で途中でおかしいことに気付かなかったんだろう。
来た道を言葉少なく3人で戻る。
戻るしかない。

やっと正しいコースに出た時に、3人で道端に寝た。
車も時折通る林道だけど、ただ、ただひっくり返っていたかった。
人間休むとまた元気になるから不思議。
信州峠から横尾山へ。
そこからゴールまでは破線ルートの迷いやすい道だけど、試走していたおかげで問題なく進むことが出来た。

やっと飯盛山が見えた!!!
あの山の麓の平沢峠があり、そこの「しし岩」がゴールです。

どんどん飯盛山が大きくなり、完走を確信します。
その時、飯盛山の中腹あたりで手を振ってる人がいます。
大声で「お〜い」って叫んでいます。

良一さんだ!
そして、チーム凰のリーダーの竹田くんも!!

嬉しくて嬉しくて、3人でキャッキャッ云いながら、足早に進みます。
合流した時に、みんなで握手。
もちろん熱いものが込み上げてきます。

二人に伝えたいことがたくさんあるけれど、うまく言葉になりません。
急ぐ必要もなかったのだけれど、走ってゴールに向かいます。
こんなにぼろぼろになっていても走ることが出来る自分に驚きながら。


私を真ん中にして、3人でしっかりと手を繋ぎ、バンザーイをしてフィニッシュ。

50時間04分。


「絆」って、言葉があるとしたら、その時の私たちは、正しくその通り「絆」で結ばれていたのだと思います。

千夏ちゃん、なおちゃん。
こんなお転婆オバチャンの私に付き合ってくれてありがとう。

本当に、本当に感謝してるよ。
ありがとう。

そして、たくさん応援してくれたチーム凰のみんなも、ありがとう。

ケガばかりしている私を心配して、「気をつけて。これ以上転ぶと身体に穴が開いちゃうよ。」と送り出してくれた子供たち、ありがとう。

山の道具を私たちに貸してくれた山の師匠、ありがとう。
自分が何十年も使っていたロープを、私達が10メートルしか必要ないからと、切ってくれたので、申し訳ないなぁ〜って伝えると、「このロープが今まで自分の命を守ってくれた。今度は君の命をこのロープが守るんだから大丈夫だよ。」と。
ありがとうございます。



こんなにぼろぼろになり、身体もいっぱい傷付いた。
いっぱい怖い思いもした。
それでも、やっぱり山が好きだ。
それでも、やっぱり山を想っている。